大動脈瘤・解離とは
- 全身に血液を届ける大動脈
- 大動脈瘤とは?
- どんな瘤があるの?
- どこに瘤ができるの?
- 大動脈解離とは?
- どんな解離があるの?
- どこに解離ができるの?
全身に血液を送る大動脈
大動脈とは、心臓の左心室から始まり、頭側に向かい、弓状に曲がりながら腹部に向かい、おへその下あたりの分岐部で終わる、最大の動脈であり、全身に血液を送り出す動脈の本幹のことです。
大動脈瘤とは
大動脈瘤とは、正常な大動脈の内側の一部、または複数部位が病的に拡張した状態のことを言います。端的に言えば、大動脈が正常径の1.5倍以上に、永久的に拡張した状態です。
大動脈の拡張は、老化、アテローム性動脈硬化、感染、炎症、外傷、先天的な異常、および血管自体の性質の変化などの結果として起こります。こうした異常に伴う病的変化により、大動脈に肥厚や薄層化、膨張、亀裂、破裂、狭窄、解離、またはこれらの状態が組み合わさった変化が起こります。動脈瘤は、大動脈壁の構造の変化によって生じ、高血圧等により悪化します。
どんな瘤があるの?
動脈瘤は、瘤の形状、形態、原因、部位により分類されます。
形状による分類では、紡錘状、嚢状
形態による分類では、真性、仮性、解離性に区別されます。
紡錘状動脈瘤は、大動脈壁全体が膨らむ、円柱状の左右対称な拡張です。嚢状動脈瘤は、大動脈壁の一部分のみが膨らむ、より限局的な瘤です。紡錘状動脈瘤の方が嚢状動脈瘤よりも多く見られます。
また真性動脈瘤は3つの層になっている血管壁がすべてが拡張する状態であるのに、仮性動脈瘤は3つの血管壁の一部だけが拡張している状態のものを指します。解離性動脈瘤は血管壁の一部の亀裂より血液が血管壁内に流入して2層となって拡張している状態を指します。
どこに瘤ができるの?
大動脈瘤は発生部位により、胸部大動脈瘤・胸腹部大動脈瘤・腹部大動脈瘤に分類されます。大動脈瘤の臨床像および治療はその発生部位により大きく異なります。
最も多いのは腹部大動脈瘤です。胸部大動脈瘤は、上行大動脈瘤・弓部大動脈瘤・遠位弓部大動脈瘤・下行大動脈瘤に分類されます
大動脈解離とは?
大動脈解離とは全身に血液を送りだす動脈の本幹である大動脈の一部に亀裂が入り、そこから血液が流入し2層に大動脈が裂けてしまう状態です。大動脈解離は大動脈が裂けている範囲によって大きく2種類に分類されています。この分類はスタンフォード分類と呼ばれているものでありA型とB型に分類されます。スタンフォード分類のB型で合併症(血管が急速に膨らんでいる状態や一部の血管に血液が流れていない状態等)を併発している場合にステントグラフト治療の適応となります。大動脈解離の分類の詳細については次のページをご覧ください。
どんな解離があるの?
大動脈解離は一般的にStanford分類というもので大きく2種類に分けられます。この分類は大動脈が裂けて2層の状態となっている範囲で分けられ、A型は心臓の近くまで解離が及んでいるものを指し、B型は心臓の近くまでは解離が及んでいないものを指します。前項の通り、このうちStanford B型で合併症(血管が急速に膨らんでいる状態や一部の血管に血液が流れていない状態等)を併発している場合はステントグラフト治療適応となる場合があります。
また細かい大動脈解離の分類として以下の図のように血液が流れている部分によって分けられています。大動脈解離によって大動脈は2層に裂けた状態となり、本来血液が流れるべき部分を真腔、血液が流れるべきではない部分を偽腔と呼びます。真腔にのみ血液が流れている状態を偽腔閉塞型、偽腔にも血液の流れがある状態のことを偽腔開存型と分類しています。またULP型解離という偽腔の中で局所的に血流が認められるものもあります。
大動脈解離を発症してからの時期による分類では、発症後2週間以内を急性期,2週間を超えて3ヵ月までを亜急性期,3ヵ月を超えた場合慢性期と呼ばれています。
どこに解離ができるの?
大動脈解離は真腔から偽腔へ血液が流入する裂け目(エントリー)が起点となります。エントリーの発生部位は様々ですが、ステントグラフト治療適応となるStanford B型の解離の場合、以下の図の矢印の位置(左鎖骨下動脈の遠位部分)にエントリーが発生する場合が多いです。