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胸部大動脈瘤・解離を知ろう

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胸部大動脈瘤・解離とその症状

胸部大動脈瘤の治療

ステントグラフト治療

  • リスク・安全性に関わる情報
  • 利点
  • 治療の流れ
  • 治療後の注意・フォローアップ
  • 担当される先生への確認事項

ステントグラフト治療

リスク・安全性に関わる情報

血管内治療が正しい選択かどうか?

すべての患者様が血管内治療を受けられるわけではありません。担当される先生は、病変を被覆するために必要な場所へとステントグラフトを到達させるために血管の中でカテーテルを進めていくことが可能かどうかを確認し、ステントグラフト大動脈に付着させるのに適した場所があるかどうかを確認するために、血管の画像を撮影する必要があります。また、生涯にわたって画像検査(体内の写真を撮影するためにX線画像、CTスキャンMRIスキャン又はその他の技術を使用すること)を受けることが問題にならないかどうか、そして、必要があれば、将来ほかの手術を受ける意思があるかどうかについても、患者様と担当される先生で相談する必要があります。

血管内治療が選択肢にならない場合

ステントグラフトの感染の原因となる症状がある場合又はステントグラフト材料に対してアレルギー反応を示す場合には、ステントグラフトが感染する又はアレルギー反応が生じる可能性があり、これらはどちらも命に関わる状態であるため、血管内治療を受けるべきではありません。

次の条件に当てはまる場合、担当される先生は胸部ステントグラフトの使用を勧めない可能性があります。

  • フォローアップのための定期的な来院と画像検査(体内の写真を撮影するためにX線画像、CTスキャンMRIスキャン又はその他の技術を使用すること)を受けられない
  • 画像検査に使用する色素に体が耐えられない
  • 出血性の病気がある
  • 腎臓の病気がある
  • 抗凝固剤を使用できない

患者様は、担当される先生にアドバイスを受けながら、患者様に血管内治療が適さないかどうかを判断することができます。

警告

次のリストに含まれる患者様にステントグラフトを使用した研究はまだありません。そのため、このリストの項目が当てはまるかどうかについても、担当される先生とよく話し合わなければいけません。

  • 過去にも大動脈の同じ領域にステントグラフトが留置されたことがある
  • 結合組織病がある
  • 輸血(血液が失われたために必要となった血液を、体外の供給源から循環系に入れること)を拒否する
  • 最近脳卒中(脳の一部に血液が供給されなくなることにより、脳の機能が失われること)を発症している
  • 妊娠している
  • 18歳未満である

これらの状況のどれかが当てはまる場合には、体内に胸部ステントグラフトを留置することが適切であるかどうかについて決断する際に、担当される先生が助言を行う必要があります。

起こりうる問題

血管内治療手術は外科手術です。そのため、問題が生じる可能性もあります。手術が正しい選択かどうかを決める前に、手術を受けることで起こりうる問題についても担当される先生と一緒に検討してください。胸部下行大動脈内の病変の治療に関連して起こる大部分の問題は、治療後最初の30日間に発生します。

胸部大動脈瘤の治療のための血管内治療の問題

胸部大動脈瘤血管内治療から30日以内に起きる可能性のある一般的な問題のいくつかを下の表に示します。

確率(%) 30日以内の問題
10%
  • 異常な又は不規則な心拍
  • 著しい失血
5-10%
  • 肺炎(肺の腫脹や痛み。通常は感染が原因で起きる。発熱、咳、呼吸困難の症状があることが多い)又は呼吸困難
  • 血管の穿孔又は亀裂
3-5%
  • 両脚の感覚が一時的に失われる
  • 補助手段なしでは呼吸ができない
  • 血液の凝固の問題
  • 腎不全
  • 外科的切開部周囲の血液の異常な貯留
  • 血液が固まりにくくなる
  • 脳卒中(永久的又は一過性)
1-3%
  • 死亡
  • 仮性動脈瘤(血管壁の外側の2つの層の間に血液が貯留する状態であり、過去に損傷を受けたことのある大動脈の領域内に生じやすくなります)
  • うっ血性心不全の悪化
  • 胃からの出血
  • 血管の閉塞
  • 肺の中の異常な体液の貯留
  • 腎機能の低下
  • 心臓発作
  • 両脚の感覚が永久に失われる
  • 腸管への血流の低下
  • 合併症を治療するための2回目のインターベンション(治療的介入)
  • 動脈瘤の増大が続く状態を治療するための2回目の手術
  • 合併症を治療するための開胸手術
1%以下
  • 肺の中の主要な動脈の閉塞
  • 心臓への血流と酸素供給量の減少
  • 動脈と静脈の異常な接続
  • 凝血塊の形成
  • 動脈瘤破裂(血管の病変部の近く又は病変部内の血管壁に生じる亀裂)

胸部大動脈解離の治療のための血管内治療の問題

その他の病変、例えば解離及び鈍的外傷(胸部への外傷性の力が原因で胸部大動脈に起きる損傷(例えば、自動車事故の際に生じるもの))の血管内治療によって起こりうる問題は、前述の動脈瘤の治療のセクションで示した問題と同じようなものになることが予想されます。

手術に伴うリスク

手術が原因で起こりうる問題には次のようなものがあります。

  • 感染
  • 発熱
  • 切開創の治癒の問題
  • グラフト留置手術に伴う痛み/不快感(通常は一時的なもの)
  • 胃/腸の問題(例えば腸閉塞)
  • 急性放射線傷害
  • Retrograde Type A 解離血管内治療後に生じるまれな合併症であり、大動脈内に生じた新たな亀裂が原因で、血液が大動脈の層と層の間を心臓に戻る方向に流れる状態)
  • 開胸手術への術式変更

手術後30日以降に起こりうる血管内治療の問題

ステントグラフトは決まった場所に縫い付けるものではないため、大動脈の問題が継続していないことを確認し、体内のステントグラフトが大動脈の問題につながりうる兆候を示していないことを確認するために、担当される先生が定期的に画像検査所見を観察することが重要です。ステントグラフトに関連して起こりうる事象には次のようなものがあります。

  • エンドリーク(ステントグラフトと大動脈の間に血流が生じる)
  • マイグレーション(本来あるべき場所からステントグラフトが移動し、エンドリークの発生につながる場合がある)
  • ステントグラフト材料の破損(これはマイグレーションの原因となる場合がありますが、発生頻度はまれです)。

大動脈又はステントグラフトに後から問題が起きる可能性があるかどうかについて、必ず担当される先生に質問してください。治療の効果は長く続かない場合もあり、ステントグラフトの有効性を維持するために追加手術が必要になる場合もあります。ステントグラフトの有効性を監視するため、長期間のフォローアップが重要です。血管内治療の場合は、健康状態とステントグラフトの性能を評価するため、生涯にわたって定期的なフォローアップを行う必要があります。担当される先生がステントグラフトに関連する問題を見つけた場合は、追加のフォローアップが必要になります。手術後最初の1年間に行うフォローアップ、その後は1年に1回の間隔で行うフォローアップの日程を守ることが重要です。胸部大動脈病変血管内治療の持続的な安全性と有効性を確保するために、一貫性のあるフォローアップを定期的に行うことが非常に重要であることを知っていただく必要があります。

それぞれの患者様によって、問題が異なる可能性があります。この情報を理解して使用できるよう、必ず担当される先生から助言を受けてください。

利点

治療によって得られる可能性のあるメリット

病変の生じた又は損傷した大動脈の治療を受けることによって、患者様が得られる最大のメリットは、破裂が生じる可能性が低くなり、正常な血流状態が回復することです。治療しないまま放置すると、大動脈病変(様々な種類の血管の病変部又は損傷部。例えば動脈瘤、解離、外傷性の鈍的損傷などがある)の拡張や破裂が起きて、その結果、体の中で出血が生じる可能性があり、この状態は命に関わります。動脈瘤が破裂する危険性があるかどうかを確認するには、担当される先生にご相談ください。大動脈の重度の病変の治療の選択肢には、血管内治療又は開胸手術による治療があります。

治療の流れ

手術前

手術の前に、画像検査(体内の写真を撮影するためにX線画像、CTスキャンMRIスキャン又はその他の技術を使用すること)を行います。これらの検査を行うことで、病変の生じた又は損傷した大動脈の評価を行うことができます。

手術中

通常、血管内手術は終了までに1~6時間かかります。通常は手術中の患者様は眠っている状態で、痛みを感じません。

  • 1. 左右どちらかの鼠径部(体の左右にある腹部と太ももの間の領域)に小さな切開を加えます。
  • 2. 胸部ステントグラフトを内部に納めたカテーテルを切開部から挿入し、大動脈の中の病変動脈瘤解離)部に到達するため、大腿動脈(左右の脚の太ももの部分に血液を運ぶ血管。大動脈に到達するための経路としてこの血管を使用することができます)の中にカテーテルを進めていきます。

注: カテーテルを誘導するために特殊なX線写真(透視)を使用します。もしも腎臓に問題がある場合は、必ず担当される先生にお知らせください。

  • 3. カテーテルを所定の場所に留置したら、ステントグラフト大動脈の中に留置します。
  • 4. ステントグラフトが留置されると、病変部又は損傷部の上側と下側で大動脈に適合する適切な大きさにステントグラフトが拡張します(図1、2)。

注: 病変の存在する/損傷した大動脈を治療するために、追加のステントグラフトが必要になる場合があります。

  • 5. カテーテルを取り除き、ステントグラフトが適切に機能しているかどうかを確認するために医師がテストを行います。
  • 6. 鼠径部の切開を閉じて手術を終了します。

手術後

血管内治療が終わったら、回復室へと運ばれ、そこで最長6時間は横になって寝ていなければいけません。これによって 鼠径部に加えた切開の治癒が始まります。最長2日間はある程度の不快感が残るかもしれません。体の状態に応じて、恐らくは数日間の入院が必要になるでしょう。さらに詳しい情報については担当される先生にご相談ください。具体的なケアの方法については、担当される先生から指示が与えられます。

治療後の注意

通院計画:

血管内治療手術を受けた後で次の症状のうちどれかが現れたときは、すぐに担当される先生に連絡して相談してください。

  • 背中、胸、又は鼠径部の痛み
  • めまい
  • 失神
  • 脈が速くなる
  • 突然脱力する
  • 脚、お尻、又はその他の四肢が痛む、しびれる、冷たく感じる、又は脱力する

治療後のフォローアップ

通院計画:

血管内治療に関して起きる大部分の問題は無症状であるため、フォローアップのための定期的な来院日程を担当される先生と相談して決めることが重要です。病気の経過を担当される先生に定期的にチェックしてもらう必要があります。

担当される先生は、患者様の体の状態に応じてフォローアップのための来院日程を決定します。多くの場合、フォローアップは1か月後、1年後に行い、それ以降は毎年1年に1回行います。ステントグラフトの性能を監視するために画像検査が必要になります。

  • 患者様のステントグラフトの状態をチェックするために、フォローアップのための定期的な来院を行う必要があります。旅行に出ている場合は、フォローアップのための来院日程を調整するために担当される先生に相談してください。
  • 胸部ステントグラフトは、スクリーニング機器、例えば空港で行うセキュリティスキャン機器に反応することは予想されません。
  • 激しい身体活動を行えるかどうかについては、担当される先生にご相談ください。

特定医療機器登録用紙について:

ステントグラフト内挿術後、患者様の名前や連絡先などをあらかじめ登録しておき、必要なお知らせをする際に、担当医師を通じて登録された連絡先などに情報提供を行います。そのため、担当医師は特定医療機器登録用紙に必要事項を記入します。写しの1部はご本人用、もう1部は担当医師用、そして3枚目の写しはステントグラフトの販売元の会社にて保管されます。この登録用紙には、大動脈に留置したステントグラフトのモデル番号、シリアル番号と本数等が記載されています。

担当される先生への確認事項

次のようなことを担当される先生にたずねてみましょう

  • 病変の生じた又は損傷した大動脈を治療するためのほかの選択肢には何がありますか?
  • この治療にはどのステントグラフトが承認されていますか?
  • 血管内治療手術において起こりうるすべての問題は何ですか?
  • 開胸手術による治療において起こりうるすべての問題には何がありますか?
  • 私はどんな種類の麻酔を受ける必要がありますか?それらの麻酔にはどんなリスクがありますか?
  • 私の鼠径部をどのような方法で切開し、どのような方法で治療するのですか?
  • 血管内治療手術を受けた後で、どれくらいの頻度で担当される先生のフォローアップを受けなければいけませんか?また、どんな検査が行われますか?
  • 治療後は活動を制限しなければいけませんか? その場合、どのくらいの期間制限しなければいけませんか?
  • ステントグラフトはどのくらいの期間私の体内に留置されるのですか?